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漢方でメンタルケア

漢方でメンタルケア

内容

全般性不安障害(GAD)  社会不安障害(SAD)

パニック障害(PD)  自律神経失調症

うつ病(DD)

の現代医学による治療と漢方薬による治療について解説します。

ごゆっくりご覧ください。

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ケアバランス
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全般性不安障害(Generalized Anxiety Disorder:GAD)とは

不安とは「気がかりな心の状態。安心できないさま」のことをいいますが、それは誰もが感じるもので、不安を感じるからといって、日常生活に支障をきたすことはあまりありません。ところが、誰もが感じる程度をはるかに超える不安を持ち、それがもとで日常生活に支障をきたしてしまう「不安障害」という病気があります。

GADも不安障害の中の一つであり、「特定の状況の限定されない、理由の定まらない不安や心配」が長期間続き、このような不安や心配に「こころやからだ」の症状が伴う病気で、以前は不安神経症と呼ばれていました。

1.全般性不安障害の患者さんの特徴

GADの患者さんが持つ不安や心配の原因は、ある特定のことに限定されるわけではなく、「家庭生活」「仕事」「学校」「近所づきあい」「地震や大雨などの天災」など、あらゆるものが対象になります。

そして、自分ではどうすることもできない事柄についても深刻に悩み、不安や心配をコントロールできなくなって、「こころやからだ」の調子が悪くなり、日常生活に支障をきたしてしまいます。

なお、患者さんの男女比は、1:2となっており、女性に多い病気であり、20歳前後で発病することが多いといわれています。

2.身体症状

・疲れやすい
・頭痛、頭重、頭の圧迫感や緊張感、しびれ感
・めまい感、頭がゆれる感じ、船酔している感じ
・首すじや肩のこりなど筋肉が緊張している
・身体の悪寒や熱感、手足の冷えや熱感
・全身に脈拍を感じる
・便秘または下痢
・頻尿 など

3.精神症状

・そわそわと落ち着かない、緊張してしまう、過敏になってしまう
・集中できない、注意散漫
・記憶力が悪くなる感じ
・根気がなく疲れやすい
・刺激に対して過敏
・イライラして怒りっぽい
・ささいなことが気になり、とりこし苦労が多い
・悲観的になり、人に会うのが煩わしい
・寝つきが悪く、途中で目が覚めやすい、又は熟睡した感じがない

4.周りに全般性不安障害の患者さんがいる方へ

GADの患者さんは、不安や心配を周りに訴えることが多いのですが、その訴えの中には、病気ではない人からみるとナンセンスに感じられることもあるので、じっくりと訴えを聞いてあげることが難しいときもあるかと思います。
しかしながら、不安や心配に伴って「こころやからだ」にも不調が長く続いていることを理解して、温かい気持ちで支えてあげてください。
また、GADの患者さんと思われる方が周りにいて、しかも治療を行っていないようでしたら、単なる心配性とみなさないで、なるべく早く治療を受けるようすすめてください。

5.全般性不安障害の治療法

GADの治療法には大きく分けて薬物療法と精神療法の2つがあります。GADの本態(病気のもと)は不安にありますので、まずは薬を使って、不安をコントロール可能なくらいまで軽くし、精神療法によって患者さん自身が不安をコントロールできるようにしていきます。

【現代医薬療法】

海外では、早い時期から薬物による治療の研究が盛んに行われており、既にGADの治療薬として承認され、患者さんの治療に使われている薬(パキシル)もあります。
一方、日本では、GADという病名で国(厚生労働省)から承認されている薬はなく、抗うつ薬や抗不安薬などを用いて治療が行われているのが現状です。

【精神療法】

GADの発病の原因が、患者さんの生育歴や性格によっているような場合は、精神療法も重要となります。精神療法には、カウンセリング、認知行動療法、セルフコントロール法などがあります。精神療法は、患者さん自身の努力がかなり必要なことや専門医との相性などもあり、効果にバラツキが出る場合があります。
精神療法の治療に当たっては、必ず専門医(精神科や心療内科)にご相談ください。

【漢方療法】

不安をコントロールする「安神薬」、不安のために生じる身体の変化を軽くする熄風薬、不安が大きくなってしまう素質を改善するアダプトーゲン活性薬や補腎剤などを症状と体質に合わせて組み合わせます。

安神薬:百合地黄湯、黄連阿膠湯、交泰丸、天王補心丹、

柴胡加竜骨牡蛎湯、桂枝加竜骨牡蛎湯

熄風薬:天麻鈎藤飲、釣藤散

アダプトーゲン活性薬:五加参、シベリア人参、海馬補腎丸

GADは発病すると、他の精神科領域の病気(うつ病、パニック障害、社会不安障害(SAD)など)を併発する可能性が高くなるといわれておりますので、GADの症状(コントロールできない不安や心配が続き→こころやからだに不調をきたす)が現れている場合は、早めの治療が大切です。

社会不安障害(Social Anxiety Disorder: SAD)とは

・会議などで発表したり、意見を言ったりする
・人前で電話をかける
・権威ある人(学校の先生や職場の上司)やよく知らない人と話をする
・多くの人の前で話したり、歌を歌ったりする

このような状況に自分が置かれたり、また、このような状況に自分が置かれることを想像するとき、「緊張したり」「不安を感じたり」することは誰でもあると思います。
SADは、このような状況で普通の人よりも「強い不安」を感じたり、それらの状況を「避ける」ことにより、毎日の生活や仕事に支障をきたしてしまう病気です。

また、SADの患者さんは、上記の他にも、普通の人であれば特に「緊張したり」「不安を感じたり」することのない次のような状況でも「強い不安」を感じることがあります。

・趣味のサークル、PTA、ゼミ等のグループ活動に参加する。
・レストラン、喫茶店、居酒屋等で飲食をする。
・職場や学校など、人前で仕事をしたり字を書く。
・会議やゼミ等他の人たちがいる部屋に入る。
・人と目を合わせる。
・来客を迎える。
・自分を紹介される など。

SADの患者さんが、このような状況に「強い不安」を感じるとき、具体的には次のような症状が現れてきます 。

・手足が震える。
・息が苦しくなる。
・動悸がする。
・口の中がカサカサになる(唾液が出にくい)。
・大量の汗をかく。
・顔が赤くなる。
・声が出なくなる。
・頻繁にトイレにいきたくなる など。

社会不安障害(SAD)の患者さんの特徴

SADの患者さんは、人前で自分が何かおかしなことをしてしまうのではないかという「強い不安」を抱き、また、それを他の人に気づかれまいとして、不安のもととなる状況を避けようとします。

例えば、「話をしているときに声が震えたり、顔がひきつったりしていると他の人に気づかれて恥ずかしい思いをするのではないかと考えて非常に不安になる」、「手が震えていることを気づかれるのではないかと心配になり、他の人がいるところで食事をしたり、字を書いたりすることを避ける」といったことです。

SADは、以前「対人恐怖症」と呼ばれていたものの一部分の症状であり、患者さんの特徴として次のことがあげられます。

・劣等感が強い。
・自分に自信がもてない。
・人前で恥をかくのではないか、変な人と思われるのではないかと強く心配する。
・他人の評価に敏感である。

社会性不安障害の治療法

SADの治療法には大きく分けて、薬物療法と認知行動療法の2つがあります。
実際の治療では、この2つの治療法を併用することが多くなっています。

【現代医薬療法】

最近の研究では、SADは脳(セロトニン神経系とドーパミン神経系)の機能障害により発症するのではないかと推測されており、現在もその発症原因について、世界中で研究が進められています。

日本では、SADという病名で国(厚生労働省)に承認されている薬は(ルボックス・デプロメール・パキシル)があり、患者さんの症状により抗うつ薬や抗不安薬なども治療で用いられています。

【認知行動療法】

認知行動療法は薬物療法より歴史が長く、精神療法の中でも重要と考えられている治療法ですが、日本ではあまり知られていません。 認知行動療法では、エクスポージャー、ソーシャルスキルトレーニング(社会技術訓練)などの方法を用いて、実際に恐怖を感じる場面に直面したときに感じる不安感を自分自身でコントロールできるようにします。

薬物療法と違い、副作用が少ないのが利点ですが、患者さん自身もかなり努力しなければなりません。そのため、認知行動療法では、問題点を順番に洗い出していき、解決できそうな問題、患者さん自身も大きな不安と感じないような小さな問題から順番に解決していくという方法がとられます。

認知行動療法の治療に当たっては、必ず専門医(精神科や心療内科)にご相談ください。

【漢方療法】

社会不安障害の漢方療法も全般性不安障害に準じます。

不安をコントロールする「安神薬」、不安のために生じる身体の変化を軽くする熄風薬、不安が大きくなってしまう素質を改善するアダプトーゲン活性薬や補腎剤などを症状と体質に合わせて組み合わせます。

安神薬:百合地黄湯、黄連阿膠湯、交泰丸、天王補心丹、

柴胡加竜骨牡蛎湯、桂枝加竜骨牡蛎湯

熄風薬:天麻鈎藤飲、釣藤散

アダプトーゲン活性薬:五加参、シベリア人参、海馬補腎丸

パニック障害( Panic Disorder:PD )とは

パニック障害とは「前触れもなく突然、強い不安感に襲われる」「胸がドキドキして張り裂けそうになる」「原因不明のめまいがして座りこんでしまう」などの症状が現れたり、それらの症状を体験した後に「またあの症状が起きてしまったらどうしよう」という強い不安を感じたり、またそれらの症状が起こった場所や状況を恐れたりする病気のことをいいます。

パニック障害の患者さんの中には、うつ病を併発する方も少なくありません。

■ パニック障害に見られる3つの症状

1.パニック発作
パニック発作とは、なんの前触れもなく動悸・呼吸困難・めまい・発汗・手足の震え・吐き気などの身体症状が、強い不安・恐怖とともにあらわれることをいいます。これらの症状は、突然起こって10分以内に頂点に達します。それほど長くは続かず、通常は20~30分の間、長い方でも1時間以内にはおさまります。・ 動悸(心臓がドキドキする)
・ 呼吸困難
・ 発汗
・ めまい
・ ふるえ
・ しびれ
・ 恐怖感
・ 現実感の喪失

2.予期不安

パニック発作を経験した後に、「またあの発作が起こったらどうしよう」という強い不安を持つことを予期不安といいます。

さらに、予期不安がパニック発作を誘発することがあります。パニック発作への不安(予期不安)で頭がいっぱいになり、思考が悪循環のループにおちいってしまうような場合です。

具体的には、

「また発作が起こったらどうしよう」

「でもきっと起こるんだろうな」

「なんだか不安でいっぱいになってきた」

「ああ、やっぱり発作が起こってしまった」

という具合です。

予期不安によるパニック発作の誘発は、パニック障害の特徴の一つです。

3.広場恐怖
パニック発作が起こった場所や状況に対して不安を抱き、そのような場所や状況を避けるようになることを広場恐怖といいます。

広場恐怖の対象となる場所や状況は人によってそれぞれ異なりますが、一般的には、電車やバス、車、飛行機、エレベーター、歯医者、美容室、映画館、会議室など、人ごみもしくは一人きりになる場所、逃げるに逃げられない状況が多いようです。一人での外出が困難になることもあります。

ちなみに広場恐怖の「広場」とは、ギリシャ語で「市場」「集会」などの意味を持つ「アゴラ(agora)」が語源であって、「広い場所で恐怖を感じる症状」という意味ではありません。

広場恐怖はパニック障害の症状のひとつではありますが、パニック発作・予期不安のようにかならず起こるわけではなく、パニック障害の患者さんでも広場恐怖の症状が現れない場合もあります。

パニック障害の原因は、はっきりと解明されているわけではありませんが、ストレスや脳内の伝達物質の働きに関連があるといわれています。
また、過労や睡眠不足、かぜなどの身体的な悪条件が発症の誘因になるともいわれています。

パニック障害の治療法

パニック障害の治療には、薬物療法、認知行動療法、生活習慣の改善などがあります。

【現代医薬療法】

治療法として多く用いられているのは薬物療法です。薬物療法では、パニック発作を抑えるのに大きな効果をもつ薬が用いられます。なお、パニック障害という病名で国(厚生労働省)に承認されている薬は2つしかなく(一般名:パロキセチン(パキシル)、セルトラリン(申請中))、患者さんの症状によってその他の抗うつ薬や抗不安薬も用いられることもあります。

【認知行動療法】

認知行動療法は、予期不安や広場恐怖の原因となっている場所や状況に徐々に慣れていく、またもしも不安や発作が起こっても大丈夫だということを確認するなど、行動によって「誤った学習(認知)」を刷新していく治療法です。

例えば、電車を不安に感じている患者さんが、知人につきそってもらって一駅だけ乗ってみる、少し不安だったけど乗ってみたら大丈夫だった、という具合に、行動することで正のフィードバックを少しずつ獲得していきます。

しかしながら、認知行動療法は一歩間違えると症状の悪化につながりかねないので、専門医の指導のもとで無理をせず慎重に行なう必要があります。

【漢方療法】

パニック障害の漢方治療は、熄風剤を中心に治療します。

熄風薬:天麻鈎藤飲、釣藤散、鎮肝熄風湯、

症状の現れ方により重鎮安神薬を組み入れます。

重鎮安神薬:竜骨、牡蛎、磁石、真珠、琥珀

症状が軽くなってきたら、本治方のため補腎剤を組み入れます。

睡眠不足などの乱れた生活習慣や精神的なストレスは、パニック障害の治療の大敵です。生活習慣を改善し、ストレスをためないようにしましょう。
そのためにも規則正しい生活を送り、またそれぞれにあった気分転換の方法を見つけるとよいでしょう。

自律神経失調症

自律神経失調症という病名は、医学の教科書にはどこにも出ていません。外国にもありません。それなのに誰もがなんとなく知っているという、不思議な病気です。

確かに多くの症状が自律神経に関係します。眠れない、食欲がない、めまいがする、肩が凝る、手足がふるえる、便秘、・・・自律神経に関係する症状は、あげていくときりがありません。むしろ自律神経が関係しない症状はないと言ってもいいでしょう。

自覚症状があるのに、検査してもなんの異常もない時、自律神経失調症と診断されることがよくあります。しかし、症状が自律神経に関係していても、自律神経失調症という病名は医学用語にはないのですから、本当はほかの病名、たとえばうつ病、不安障害、パニック障害などの病名がつくはずです。自律神経失調症というのは、とてもあいまいな病名なのです。

1.自律神経について

私たちの体は、気温の変化や精神的ストレスなど外からの刺激に対して、体内の状態を健康に保とうとする働き(恒常性維持機能=ホメオスタシス)があります。

この働きを担うのが「自律神経」で、内臓の運動や休止・血管の収縮と拡張・またホルモン分泌から免疫までなど、すべての器官を調整しています。

自律神経は活動している時の神経といわれる『交感神経』と、休息時の神経といわれる『副交感神経』の二つに分類されます。相反する働きをするこの二つの神経がほぼ全身の器官に同居し、お互い綱引きをしながら働いて、体がバランスよく機能しているのです。 そして、綱引きのバランスが程よく取れたところが、現時点での必要な機能というわけです。

ところが、不規則な生活習慣やストレスなどにより心身に大きな負担がかかると、からだの調節能力を越え、バランスが崩れます。そして、交感神経、副交感神経のどちらかが強すぎると、いろいろな症状が出てからだの不調が現れてきます。このように、どちらか一方の力が勝ってしまい、バランスが乱れた状態が自律神経失調症です。

幸い人の体は良くできており、自律神経のバランスはよほどのことがないと大きく崩れることがなく、うまく保たれています。もちろん日常の様々な状況において、一方へ少し傾くことはよくあります。下の表を参考に自分のからだは「今どちらに傾いているか」想像してみるのも面白いかもしれませんね。

2.自律神経失調を起こすさまざまな原因

自律神経のバランスが乱れるのには、いろいろな原因が複雑にからみあっていると言われています。当然その原因も一人一人違います。

■生活のリズムの乱れ
夜更かし、夜型人間、夜間勤務や、子供の頃からの不規則な生活習慣など、自然環境と人体のリズムを無視した社会環境やライフスタイル。

■ 過度なストレス
仕事などの社会的ストレス、人間関係、環境の変化など、小さくても持続的なストレスなど。

■ 環境の変化
転勤に伴う引越し、仕事などの環境の変化による人間関係などへの不適応や過剰適応がいつも神経を緊張させ、自律神経のバランスの乱れる原因になります。

■ ストレスに弱い体質
子供の頃からすぐ吐く、下痢しやすい、自家中毒、環境がかわると眠れないなど、生まれつき自律神経が過敏な人もいます。また思春期や更年期、身体が弱っているときは自律神経のバランスが乱れやすいものです。

■ ストレスに弱い性格
断れない性格、人の評価を気にしすぎる性格、気持ちの切り替えができない性格、人と信頼関係を結ぶのが苦手な性格、依存心が強い性格などは自分で勝手にストレスをつくり、いつまでもストレスをためる傾向にあります。ストレスに弱い性格ともいえます。

■ 女性ホルモンの影響
女性は思春期から更年期までホルモンのリズムが変化しつづけ、この変化が自律神経の働きに影響を与えます。

3.自律神経失調によるさまざまな症状

頭痛、頭重感。
耳鳴り、耳の閉塞感。
口の乾き、口中の痛み、味覚異常。
疲れ目、なみだ目、目が開かない、目の乾き。
のど のどの異物感、のどの圧迫感、のどのイガイガ感、のどがつまる。
血管系 動悸、胸部圧迫感、めまい、立ちくらみ、のぼせ、冷え、血圧の変動。
呼吸器 息苦しい、息がつまる、息ができない、酸欠感、息切れ。
消化器 食道のつかえ、異物感、吐き気、腹部膨満感、下腹部の張り、腹鳴、胃の不快感、便秘、下痢、ガスがたまる。
手のしびれ、手の痛み、手の冷え。
足のしびれ、足の冷え、足の痛み、足がふらつく。
皮膚 多汗、汗が出ない、冷や汗、皮膚の乾燥、皮膚のかゆみ。
泌尿器 頻尿、尿が出にくい、残尿感。
生殖器 インポテンツ、早漏、射精不能、生理不順、外陰部のかゆみ。
筋肉・関節 肩こり、筋肉の痛み、関節の痛み、関節のだるさ、力が入らない。
全身症状 倦怠感、疲れやすい、めまい、微熱、フラフラする、ほてり、食欲がない、   眠れない、すぐ目が覚める、起きるのがつらい。
精神症状 不安になる、恐怖心におそわれる、イライラする、落ち込む、怒りっぽくなる、集中力がない、やる気がでない、ささいなことが気になる、記憶力や注意力が低下する、すぐ悲しくなる。

4.自律神経の失調と関係の深い疾患

下記の疾患は自律神経と関係の深い疾患です。
諸検査の結果、下記の診断名がつく場合と、とくに異常が認めらない症状も多くの器官に多彩に現れているケースには自律神経失調と診断されます。
また、精神症状が特徴的である場合には、うつ病・不安障害・パニック障害・外傷後ストレス障害などと診断されます。

循環器系  心臓神経症、不整脈、起立性調節障害

呼吸器系  過換気症候群、気管支ぜんそく

消化器系  過敏性大腸症候群、神経症嘔吐、反復性臍疝痛、神経性下痢
鼓腸・呑気症(ガスによる腹部の膨満)

神経系    偏頭痛、緊張性頭痛

耳鼻科    めまい、メニエール病、乗り物酔い、咽喉頭異常感症

口腔外科   口内異常感症、舌痛症、顎関節症

皮膚科    円形脱毛症、発汗異常、慢性じんましん

泌尿器系  膀胱神経症、夜尿症、心因性排尿障害

婦人科    更年期障害

これらの疾患の治療に関しては、同時に自律神経の安定を図る治療をすることが大切です。

5、自律神経失調症の病院での治療

●自律神経調製剤……自律神経の中枢に直接作用して、安定をはかる薬。原因に精神面が関与しない場合に効果的。副作用が少なく、長期間、使用できる。

●精神安定剤(抗不安剤)……自律神経の緊張を緩和させ、不安や緊張を和らげる薬。副作用は眠気やめまい、脱力感など。

●ビタミン剤……自律神経のバランスを整えるビタミンA、B群、C、Eを処方する。他の薬との併用が基本。

●ホルモン剤……更年期の女性や卵巣を摘出して、ホルモンバランスが崩れた女性に、女性ホルモンを補充する。

6.【自律神経失調の漢方療法】

「生まれつき神経質だ」「生まれつき気が小さい」「つまらぬことが気になるのは性格だから」などもともとの性格と、年代特有な体の変化と、その人のおかれた環境などによって発症するこの疾患に対しては、症状やタイプにより、身体と心の両面に働きかける治療をします。同時に体質・性格・ライフスタイルの歪にも注目して必要があれば見直し改善することが必要でしょう。
一般には体力が上がると、神経は安定化する傾向にあります。体力のない人はまずは体力増強が基本となります。その基本は補脾(ほひ)と補腎(ほじん)です。
脳の機能は漢方では五臓の中の「心(しん)=神」を治療します。
すなわち、五臓の脾(ひ)と腎(じん)心(しん)を健康に導くように治療します。
また、多彩な症状は「肝(かん)」の失調と考えます。
代表的な漢方薬を紹介します。

1. 脾虚‥‥‥帰脾湯

2. 脾腎両虚‥至宝三鞭丸・真武湯

3. 心腎陽虚‥海馬補腎丸・八味地黄丸

4. 肝腎陰虚‥杞菊地黄丸

5. 心腎不交‥天王補心丹

6. 肝気鬱結‥四逆散・柴胡疎肝散・加味逍遥散

7. 肝脾不和‥痛瀉要方・逍遥散

8. 脾胃不和‥半夏瀉心湯・黄連湯

9. 脾胃気滞‥香蘇散・正気天香湯・九味擯榔湯

10. 肝陽上亢‥天麻鈎藤飲

11. 肝火上炎‥竜胆瀉肝湯

12. 肝火犯胃‥左金丸

13. 心肝火旺‥黄連解毒湯・三黄瀉心湯

うつ病(Depressive Disorder:DD)とは

うつ病は何らかの原因で気分が落ち込み、生きるエネルギーが乏しくなって、その結果、身体のあちこちに不調があらわれる病気です。日本人の5人に1人が、一生のうちで一度はうつ病を経験するといわれている時代ですが、そのうち治療を受けている人はわずかであるといわれています。

うつ病は精神面、身体面にさまざまな症状があらわれます。一般的にはそれらを原因別に「身体因性うつ病」、「内因性うつ病」、「心因性うつ病」と分類されてきましたが、最近では症状の程度と持続期間による分類(重症のうつ病「大うつ病」と軽症のうつ病)が行なわれるようになってきました。

うつ病の知識が広まってきたとはいえ、「軽いうつ病」に悩む人たちは普通に見えるために「単なる甘えだ」と誤解されたり、本人が病気と気がつかず、適切な治療を受けないでいたりする場合も少なくないようです。

不治の病とは違い、うつ病は治る病気です。正しい知識を身につけ、適切な治療を受けましょう。

1.うつ病になりやすい人の特徴

現在は、誰もが複数のストレスを持っていますので、誰もがうつ病と無関係とはいえません。
しかし、その中でも特に下記の素因をもつ人がストレスにさらされたうえ、傷心、転勤、出産などで違う環境に置かれるとうつ病になりやすいといわれています。・ まじめで仕事熱心。
・ 完全主義で几帳面。
・ 仕事や家事を人任せにできない。
・ 融通がきかない(思考が柔軟性に乏しい)。
・ 人にどう見られているか非常に気になる。

2.うつ病の症状

精神症状

1.物事をやるのがおっくうで早くできない。
2.集中力が落ち、仕事を能率よくできない。
3.人に会いたくない、人と一緒にいたくない。
4.寝てもさめても同じこと(心配ごとや悲観的なこと)を考えている。

身体症状

1.眠れない、頭重感、頭痛、めまい。
2.食欲不振、胃部不快感、便秘、口が渇く。
3.肩こり、背中や腰などからだの痛み。
4.息苦しい、動悸がする。
5.手足のしびれ感、嫌な汗や寝汗が出る。
6.排尿困難、性欲低下、女性では月経不順など。

3.【軽症うつ病の診断】

現代のうつ病の特徴は「軽症うつ病」が増えている点です。

以前は、うつ病になると外出できず、何もできなくなるという患者さんが大半でした。しかし、現在は、(つらいけれども)会社や家庭で何とか仕事をこなしているが、軽いうつ状態が2年も3年も続くといった新しいタイプの患者さんが増えてきています。

次の2点に当てはまる場合に、軽症うつ病の可能性が高いと診断されます。

1. 抑うつ気分(ゆううつで不安、イライラした気分)がほとんど一日中続くような日が、そうでない日よりも多く、少なくとも1年間同じような状態が続いている。
2. 1.で述べた抑うつ状態に加え、下記の6項目の症状のうち少なくとも2項目以上が、1年も2年も続いている。

・食欲減退かまたは過食。
・良く眠れない不眠か、寝すぎてしまう過眠。
・気力の低下、または疲労。
・自尊心の低下。
・集中力の低下、または決断困難。
・絶望感。

4.うつ病を治療していく上での心構え

うつ病は、「心がカゼをひいたようなもの」とよく言われています。カゼの治療と同じく早めの処置が何より有効ですし、休養が重要という点も同じです。

心身ともに問題なく健康だという状態まで治しておかないと、すぐに再発する恐れがあるため、一見よくなったようにみえても、半年や1年は薬物療法と精神療法を続ける必要があります。

治療中、心得ておくべき点は以下の6つです。

1. 「うつ病は病気である」という認識をもつ。
2. うつ病の治療には休養が必要である。
3. 治療には半年から一年の期間が必要。
4. どんなにつらくても自殺だけはしない。
5. 大事な決定は先延ばしにする。
6. 治療中の「一進一退」を理解する。

5.周りにうつ病の患者さんがいる方へ

1.不用意に励まさない。
患者は「期待に応えよう」として、疲労しきった心と体にムチをうち、かえって負担になってしまいます。
頑張って!と励ますよりは、休養をすすめましょう。

2.気晴らしに誘わない。
人と一緒にいることがかえって苦痛に感じてしまうことがあります。
気晴らしに食事や旅行などに誘うとかえって悪化してしまう場合があります。

3.本人の言動に注意する。
自殺を考えるほど深刻な状況に陥っている場合、言動にそのサインが現れていることがあります。
注意深く見守り、自殺願望が疑われたら早急に医師などに相談してください。

6.うつ病の治療法

うつ病の治療には、1に休養、2に薬物療法、3に精神療法という組み合わせで行なわれます。
多くの場合、仕事などのストレスの原因から遠ざかり、心身ともにゆっくりと休養することを指示したうえで、抗うつ薬の服用をすすめます。

そして、薬の効果が確認されたら本格的に精神療法へと移行します。

【精神療法】

医師やカウンセラーと患者が繰り返し面接を行い、患者が抱える悩みや不安を取り除いていくのが精神療法です。しかし、治療を始めた初期のころは面接がかえって患者に負担になることもあります。十分に休養し、薬の効果がある程度現れてから始めます。

患者さんは医師やカウンセラーに相談することで考え方を少しずつ変え、柔軟性をもつようになることから、うつ病を治したり、再発を予防したりすることにつながります。

【漢方療法】

漢方によるうつ病治療は「うつ症状」だけでなく患者の全体を見るという漢方の診方が特に大切となります。

理気剤、補気剤、疎肝剤、清熱剤、補血剤などを効率よく運用する必要があります。

五臓では心と脾を中心に肝や腎の弁証も必要とします。

処方は代表的なものだけにとどめます。

心血虚:遠志湯

心脾両虚:帰脾湯、甘麦大棗湯

補気剤:補中益気湯

理気剤:半夏厚朴湯、香蘇散、正気天香湯

柴胡剤:大柴胡湯、柴胡加竜骨牡蛎湯

承気剤:大承気湯

肝腎不足(陰虚火旺):天王補心丹、加味逍遥散合六味地黄丸

中等度以上のうつ病では

中等度以上のうつ病では、もちろん抗うつ薬による治療が基本となります。
しかし、抗うつ薬の効果が不十分な場合、抗うつ薬の副作用が強い場合には漢方薬の併用で有効なことは多いものです。

軽症のうつ病の場合、漢方治療のみでもかなりの効果がある場合も珍しくありません。
また、うつ病では、自律神経のバランスが乱れたり、心身共に消耗していると考えられます。このような観点から、自律神経のバランスが乱れに気剤を使用したり、体力を回復する目的で補剤と呼ばれる漢方薬を抗うつ薬に併用すると効果的な場合がよくあります。

女性のうつ病では、職場環境・家庭内環境・子育てに対する不安などの要因以外に、ホルモンバランスの変化という要因も重要だと考えられます。
香蘇散や女神散や逍遥散が良い処方です。

更年期障害の症状と「うつ病」の症状は、区別が案外難しいのですが、更年期における不定愁訴には更年期障害を参考にしてください。

■ お願い

適切な漢方治療のためにはご本人が直接来ていただくことが大切です。

一宮市・稲沢市・江南市・岩倉市・清洲市・北名古屋市・西春日井郡・小牧市などの近郊からは約30分、名古屋市・弥富市・海部郡・あま市・春日井市・岐阜市・各務原市・羽島市・羽島郡などからも30分から1時間以内の距離ですから、初めはご本人が直接お越しください。
現在服用中の薬がありましたら、ご持参下さい。

各種ご相談・お問い合わせ TEL 0586-45-4753

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